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日々気ままに本を読んでいる学生です。
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都市、この小さな惑星の リチャード・ロジャース、フィリップ・グムチジャン

環境問題を取り上げている本は数多くあるが、本書では、建築家としての立場から、建築・都市・地球と様々なスケールを通して、サステナブルな都市のあり方を提案している。サステナブルな都市というと今では陳腐な言葉になってしまうが、それでも本書で挙げられている都市のあるべき未来像は、現在の都市問題について多くの示唆を与えてくれる。著者のリチャード・ロジャーズは、パリのポンピドゥーセンターや、ロンドンのロイズ本社を設計した有名な建築家であり、同時に各国の大規模な総合基本計画プロジェクトのプランナーとして活躍した都市計画家でもある。

本書で取り上げられている事例は、産業革命から続く、20世紀の、大気汚染、森林破壊、工業化、都市のスプロール等である。これにより商業主義の場となった都市は、コミュニティを解体し、単一目的化することで人の様々な活動を分化した。単に利益を求めるシステムから、サステナビリティーを目的としたシステムを目的としたシステムへの転換が必要不可欠であり、住居、水、食糧、健康、教育、希望、自由といった、基本的な枠組みを提供することができるものを、サステナブルな都市であると提起している。

そして、急激な人口増加と貧富格差、環境悪化をいかに抑制し、サステナブルな都市をデザインするかということに焦点を当てている。都市の限られた資源をエコロジカル・フットプリントで表し、市民、サービス、交通政策、エネルギー生産の相互関係や地域環境といったあらゆる要素を視野に入れて都市計画を行っていくべきだという。そのための手段として、「コンパクト・シティ」を挙げている。コンパクト・シティは、ポジティブな意味での高密な都市であり、社会的な多様性を持った都市である。そこでは経済的・社会的活動が重なり合い、近隣界隈のまわりにはコミュニティの焦点ができる。これはデベロッパー等が行う、従来のゾーン分けによる都市とは対照的に、建物・都市・経済システムのあらゆるスケールにおいて複合用途と複雑性を浸透させることで、街路に活気をもたらし、車を使用する必要性を減少させるものである。

都市の社会的構造を損なわせている原因として、交通システムを挙げている。車の所有により、都市のスプロール化が引き起こされ、オフィス、店舗、住居といった、日々の生活を構成する空間を距離的に分割してきた。これによりコミュニティの分断だけでなく、汚染と混雑を都市にもたらす。コンパクト・シティにおいては、公共交通機関のノード(結節点)に位置する社会的・商業的活動の中心まわりに発達し、それぞれが公園や公共空間を持ち、プライベートな営みと公共的な活動の混じり合いを生み出すネットワークを構築する。これにより、コミュニティの至近距離内に雇用や種々の施設を呼び込み、車の必要性を排除する。

この概念は建築にも適用される。現在の多くの建物は金融上は商品として認識され、それ以外の価値はほとんど認識されていない。しかし本来建築は人間の生活の背景を形づくるものである。本書ではそれに従い、建物を使う人々の変化するニーズに対応していく方策や、都市を汚染から守る技術を開拓する方策について述べられている。ロンドンのナショナルギャラリーの増築計画設計競技や東京国際フォーラム設計競技の例を用いて、建物と公共領域の相互作用の重要さについて書いている。また、パリのポンピドー・センターの設計を通して、刻々変化する社会への要求事項に対応するために、建築のフレキシビリティ・順応性の美を表現した。ポンピドー・センターは、将来的な配置変更を束縛せず、諸活動が後々の建物の形を規定していくような建物として計画され、追加・削除、開放・分割のできる空間の枠組みとして設計された。全ての構造柱、設備ダクト、エレベーターや廊下を外に配置し、各空間へは、ファサードとは独立して外部に設けられた公共通路システムによってアクセスすることにより、限りなくフレキシブルな空間として計画された。ロイズ・オブ・ロンドンでは、3層の複層ガラスや、夜間の冷却エネルギーの利用、ガラスの二重皮膜を利用した煙突効果による空調換気など、エネルギー負荷を大幅に減らすテクノロジーをふんだんに活用している。

最後に、都市のサステナビリティを語る上で、建築が、急速に変化し続ける経済・交通・ビジネス等の様々な社会的要素を包むフレキシブルなコンテナと化していると言及している。東京においても住居とビジネスが融合しつつあり、リビングルームはカフェ・バー・クラブ、食事室はレストランに、浴室は温泉・サウナに、ベッドルームは旅館・ホテルに取って代わりつつある。また、建築も脱物質化され、適応性があり、浮かぶような構造であり、環境や用途類型の日々の変化に対応するものが求められていくという。技術の発展により、建築はより透過的になり、歩行者はそこの入るというよりも通り抜けていくようになる。交通においても機械化により、複雑で柔軟な交通システムのネットワークを形成するであろうと予言している。綿密なリサーチと様々なアイデアにより、都市をとりまく複雑な諸問題を柔軟に解決するための多くのアイデアにあふれた一冊だった。



都市、この小さな惑星の都市、この小さな惑星の
リチャード ロジャース,フィリップ グムチジャン,野城 智也,手塚 貴晴,和田 淳

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時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人 SMARTCUTS シェーン・スノウ、 斎藤栄一郎

世界には、信じられないような偉業を短期間で成し遂げてしまう人がゴロゴロいる。その一方でがむしゃらに努力してもなかなか成果の出ない人もいる。それらの違いは、いかに既存の常識や規範を破って斬新な手法を見つけ、効率的にこなしていく能力にある。本書では、これら短期間で成果を上げた人達に共通する習慣や思考・ラテラル・シンキングを一般の人でも実践できるよう体系化している。本書ではそのシステムを「SmartCuts(スマートカット)」と呼ぶ。従来型の省略「ShortCuts(ショートカット)」とは違い、「SmartCuts(スマートカット)」は成功につながらない努力をやめ、常識や前提を覆し、成功への近道を歩むことである。本書では、このようなラテラル・シンキングを9つのパターンにまとめ、近道を探し、少ない労力で大きく動かし、勢いに乗って舞い上がるための方法を、豊富な事例をもとに述べている。

「成功の階段をハックする」
本書にある「シナトラの法則」の通り、ライバルの多いメジャーな場所で実績を作り、その小さな成功をもとに、さらに大きなチャレンジを行い、一気に目的を達成するという流れを、歴代大統領の平均年齢の若さをもとに説明している。その過程で、成功への階段を途中まで上ったら、そのキャリアを捨てて、さらに上の別の階段に飛び移るという発想の大切さを述べている。本書ではこれをラダー・ハッキングという。

「メンターの理想と現実」
この項では、近道を探す上でのメンターの重要性を説いている。このメンターは、制度や形式であてがわれるものではなく、自然に出会ったり自ら頼み込んで協力してもらうメンターのことを言っている。自分にどのようなメンターが必要か、常に気を配り、観察力を鍛えることが大切である。本書の事例では、医療ミスが多発していた病院が、F1レースのピットにおける無駄のない立ち回りをしているフェラーリにメンターを頼むというものをとりあげている。

「フィードバックで最適化せよ」
ここでは、世界的に有名なコメディアン養成所であるザ・セカンドシティの例をもとに、フィードバックにどう対応するかについて述べている。失敗に関して、それが自分のものであろうが他人のものであろうが、次のチャレンジのために分析を怠らない。そしてフィードバックがポジティブなものであれネガティブなものであれ、感情に左右されず、自分に役立つ点を抽出することが大事であるという。

「プラットフォームの優位性」
ここでは、プログラミング言語のRuby on Railsやフィンランドの教育の事例を用いて、プラットフォームの活用を勧めている。コンピュータの活用や、完璧を求めずに合格ラインを狙うことにより、無駄な努力を省き、本当に重要だと思うことに力を注ぐことの重要性を述べている。

「波を見つけて波に乗る」
ここでは、一般的に運として捉えられるものをパターンとして認識し、地道な観察により、運に出会えそうな場所に身を置いておくことが大切だと述べている。そのために、いつその波が来てもいいように準備を怠らないようにすべきだという。

「スーパーコネクターの作法」
ここでいうスーパーコネクターとは、たくさんの人脈を持つ人のことである。たくさんの人脈を自分で築くよりも、たくさんの人脈を持つ人1人とコンタクトを取ることで、効果的にネットワークを構築できる。また、チェ・ゲバラが革命においてラジオというスーパーコネクターを利用した例により、相手のためのギブを続けることで、信頼関係を構築する方法を説明している。

「成功の連鎖をつくる」
ここでは、1つの成功を収めた後に、燃え尽きてしまわずに、それを継続させるコツを述べている。ここでも事前の準備が重要で、成功する前に次に打つ手を考えておくことが大切だという。

「シンプルを極める」
ここでは、ジェーン・チェンの開発したわずか25ドルの保育器や、アップルのスティーブ・ジョブスの活躍の事例をもとに、より良くするためのシンプル化するという姿勢の大切さを述べている。細かいことは全て省略して、本当に重要なものに集中すること、予算・環境・条件などの制約をアイデア創出に活用するコツなどが書かれている。

「10倍思考を実行する」
ここではペイパルの創業者であるイーロン・マスクのロケット開発の流れを通して、10倍思考について述べている。これは、10%改善するよりも10倍いいものを作ることを目指すというものである。ここでも常識を捨て、無駄をどれだけ省けるかということに重点が置かれており、それに加え、みんなの理想に基づいたストーリーを語り、ブームを巻き起こす方法について書いている。

本書の最後には、これら9つのスマートカットを全て活用したドウェイン・エドワーズが若くしてナイキのスニーカーデザイナーの責任者にのぼりつめ、シューズデザインの学校であるPENSOLEを立ち上げた実話をもとに、実際のスマートカットの活用法を述べている。本書を通して、成功への最短ルートは従来の手法とは全く違ったものであり、その道に向けて我々が工夫する余地はたくさんあることに気づかされる。しきたりや常識に囚われず、いかに問題にスマートに対処していくかという姿勢が、今後の飛躍的進歩に必要である。


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わかりやすく情報を伝えるための図とデザイン PIE BOOKS パイ・インターナショナル

今世紀に入って、我々を取り巻く情報量は拡大するとともに、消費者の趣味・思考・生活様式は多様化してきている。昨今はただ情報をばらまけばいいのではなく、ターゲットにとって必要な情報を整理し、わかりやすく伝えることが、消費者の心を動かすにあたって重要となっている。本書は、複雑で多種多様な情報を、直観的かつ魅力的に伝えるためのデザインとしての、ダイアグラムやインフォグラフィックの実例を多数掲載している。

本書では、グラフィックのメッセージの種類によって、グラフ・チャート、仕組み、やり方・作り方、マップ、外国人向け、ピクトグラムの6つのカテゴリーに分かれている。

「グラフ・チャート」では、グラフィックのサイズで数量を表現したり、テーマに沿ったイメージモチーフやカラーの選択、また数値をグラフやチャート以外のグラフィックで表現したり、タイムラインやすごろくや年表形式を用いることで的確にストーリーを伝えている。

「仕組み」では、自然・体・商品・業界などの仕組みについて、複雑な構成の情報をグラフィックでわかりやすく表現している。とっつきやすさを重視し、グラフィックやイメージ写真を的確に選択している。ここでは、絵本のようなキャラクターやイラストを用いて、複雑な情報の敷居を下げている。

「やり方・作り方」では、人々の生活に密着した、消費行動の方法や商品の作り方などをグラフィックでわかりやすく表現している。ここでは正確な情報を伝えるために、文章量とビジュアルのサイズのバランスが重要になっている。グラフィックは、流れの中でポイントとなるところに挿入し、情報の理解を手助けしている。

「マップ」では、観光地の地図や建物のフロアガイド等の空間的情報を、グラフィックで表現している。観光地では、自然環境や建物、ランドマークなどの、その地域の特徴となるものをイラストやイメージで強調している。建物の情報については、3Dや鳥瞰図を用いることで、空間把握の手助けをしている。

「外国人向け」では、日本における文化やマナー、観光地へのアクセス方法や楽しみ方について、外国人にも分かりやすいよう表現している。言語だけに頼らず、グラフィックを見ただけで内容を理解できるよう、直観的なイラストやアイコンが多く用いられている。

「ピクトグラム」では、建物内のサインのデザインの実例が紹介されている。文字に全く依存しないため、シンプルでわかりやすい表現になっている。また、子どもやお年寄りをターゲットとしたものが多く、目を引くために楽しいデザインとなっているのも特徴である。

どの作品もターゲットに的確にメッセージを伝えるために、最適な図やイラストの表現が用いられており、どのような意図を持ってこのような表現を用いているのかを注釈で説明しているため、大変勉強になる。また、比喩表現のバラエティがとても幅広く、発想を刺激してくれる内容となっている。現場でのデザイン制作のヒントになるのはもちろん、消費者という立場からただ眺めているだけでも非常に楽しめる本である。


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世界で一番楽しい建物できるまで図鑑 RC造・鉄骨造 (エクスナレッジムック) 瀬川康秀、大野隆司

本書は、図鑑という名前の通り、図と解説文を用いて分かりやすくRC造・鉄骨造の建物のつくり方や仕組みを解説している本である。各部において建築の専門用語がたくさん出てくるが、図と簡易な文章で楽しみながら学習していくことができる。また、建物の工事の流れに即して、アニメーションのコマ送りのように図解を展開していくことで、実際にどのようなプロセスで建物が出来上がっていくのかというのが理解できるようになっている。

本書の構成は主に、鉄筋コンクリート造の建物のできるまでのプロセス、及び各部のつくり方、鉄骨増の建物のできるまでのプロセス、及び各部のつくり方、の4つの章に分かれている。

鉄筋コンクリート造においては、2階建てのラーメン構造の建物を想定しており、基礎をつくる→1階壁・2階壁床スラブをつくる→2階壁・屋根スラブ・パラペットをつくる→屋根防水・サッシを設ける→内外装の下地を設ける→内外装の仕上げを設けるという流れで、各工程の図を交えて解説している。また、壁式構造についても簡略的に述べられている。

鉄骨増においては、ALC外壁の2階建てのラーメン構造の建物を想定しており、基礎をつくる→鉄骨の建方→床をつくる→外壁を取り付ける・耐火被覆→屋根防水・サッシを取り付ける→内装の下地を設ける→内外装の仕上げを設けるという流れで、鉄骨造の建物のつくり方を解説している。また、軽量鉄骨を用いたピンブレース構造の建物についても軽く触れられている。

鉄筋コンクリート造と鉄骨造の各部の仕組みはいくつか共通しているものが多く、屋根の構成については、アスファルト防水、シート防水、屋上緑化、勾配屋根、ALC屋根+シート防水、瓦棒葺き。外壁については、RC造塗装仕上げ、RC造タイル張り仕上げ、RC造外断熱仕上げ、ALC壁、押出し成形セメント板、金属系サイディング。間仕切り壁については、軽量鉄骨(LGS)下地クロス張り、木下地左官仕上げ、乾式耐火遮音軽量間仕切り壁、コンクリートブロック下地、押出し成形セメント板/ALCパネルによる間仕切り壁。天井は軽量鉄骨(LGS)下地クロス張り。床については、転ばし床、置き床、合成スラブ床/ALCパネル床など、現在の標準的な工法の全てを網羅している。また、鉄筋コンクリート造及び鉄骨造それぞれにおけるサッシの構法についても解説されている。

本書はとても構成がしっかりしており、建築のことを全く知らない人でも、本書を眺めているだけで、建物の仕組みや工程プロセスが頭に入ってくるようになっている。建物のできるまでの工程を解説するとともに、各部の構成の説明において、その工程を巻き戻して逆順に解説されているため、非常に丁寧に建物の構成を学んでいくことができる。本書のほとんどが図解で構成されているため、絵本のように気楽に読み進めていくことができるため、建築の構成をこれから勉強していきたいという人にはぴったりの本である。



世界で一番楽しい建物できるまで図鑑 RC造・鉄骨造 (エクスナレッジムック)世界で一番楽しい建物できるまで図鑑 RC造・鉄骨造 (エクスナレッジムック)
瀬川康秀,大野隆司

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建築家が教える人生を変える驚異のプレゼン  エクスナレッジムック)

本書は、今の建築界の第一線で活躍する建築家15組がプレゼンテクニックというテーマについてインタビューを行い、各々のプレゼンの特徴や秘訣を一冊にまとめた本である。建築におけるプレゼンテーションは多岐に渡り、建築のクライアントを相手に、円滑にコミュニケーションを図る技術や、コンペ・プロポーザルに応募するにあたって、審査員の印象に残る作品の特徴やスピーチの心得、自分が相手にものを伝えるうえでの心構えなど、様々な側面から、プレゼンというテーマにアプローチしている。また、プレゼンにおける表現の部分、つまり建築家達がスケッチや模型、製本、図面、CGなどをどのように駆使しているのかという細かい部分にも言及している。

・考えること、言葉にすること(西沢立衛)
・見る 聞く 話す(ヨコミゾマコト、藤村龍至、手塚貴晴+手塚由比)
・求められること(吉田明弘、谷尻誠、千葉学、みかんぐみ)
・伝わるプレゼンのかたち(吉村靖孝、シーラカンスアンドアソシエイツ、小泉誠、渡邉健介、大江匡)
・心を動かすこと(阿部仁史、古谷誠章)
・コラム
 建築家は自転車が好き!
 聞きました!コミュニケーションのあれこれ
 模型小宇宙

それぞれの建築家のコンペ案や、作品、CG映像、ドローイングを見て思うのは、どの建築家も自分なりのプレゼンテーションのフォーマットを編み出していて、なるほどと思わされることが多かった。特に印象的だったのは、以下の3人。プレゼンテーションは、ものごとをどう存在させるかということであり、社会性と固有性を兼ね備えた言葉によってその可能性が開かれ、その人や文化のありようを示す、だから自分が発する言葉について、自分に嘘をついてはいけないという哲学を持つ西沢立衛氏。プレゼンにおける事務所内での再現性を重視し、プレゼンシートのグリッドシステムや模型のキット、ダイアグラム等を共有し、ニュートラルでドライな態度でプレゼンに臨むという吉村靖孝。図面や模型に頼らず、自分の考えを全部把握したうえで言葉で勝負するとともに、時には相手の要望を超えるようなイノベーションを提示して問題解決を図るプランテック総合計画事務所の大江匡氏。

本書を読み通して分かるのは、15組の建築家はみな、どれもプレゼンの方法が異なっているということであった。プレゼンをするのも、受け取るのも人間であるため、全く同じプレゼンが通用するはずもない。しかし、それぞれの建築家がいかにして自分の考えを相手に伝えるかということに多くの神経を注いでいるということが伝わってくる。どのプレゼン方法も、行き当たりばったりではなく、自分がこうずれば、相手はどう思うのかというシミュレーションを綿密に行って辿りついた答えだということが分かる。プレゼンの模範解答は見つからないが、思考錯誤して自分にとっての適切なプレゼン方法を見つけ出すヒントにはなる本だと思う。



建築家が教える人生を変える驚異のプレゼン (エクスナレッジムック)建築家が教える人生を変える驚異のプレゼン (エクスナレッジムック)


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